2008年03月15日

「アメフラシ」は輪になる

中森です。

 先週、踏み切りで事故があったようだと書いたが、全国レベルのニュースであったみたいでその日の午後にはアサヒコムに記事が載っていた。特急サンダーバードと軽自動車が衝突したそうで、一人が死亡一人が軽傷を負うという事故である。衝突のあと電車が止まるまで摩擦熱で火花が飛んだため、消防車が出動していたらしい。今朝、その踏切を通る時、道路を挟み警察が数名立っていた。目撃者を探しているようすである。
 そんな中車内ではN響アワーで放映したコンサートが流れていて、チョン・ミョンフンがマーラーの第九番を指揮していた。マーラーはベートーベンやブラームスとは違った現代的なフレーズと叙情的なフレーズが交差している。指揮から生み出されるテンポも微妙な技術が必要となるため、指揮するのは極めて難しいのではと思ってしまう。その前の日に聞いていたDVDはBSのクラシックロイヤルシートで放映したフィリップ・ヘレヴェッヘが指揮、ベートーベーン9番8番7番であった。革新的な演奏と解説にはあるが、まるでベートーベンとは思えないような違う曲を聴いている感じである。第九はヘレヴッヘよりも伝統的でオーソドックスな演奏のほうがいいと思うが、ベートーベンの交響曲の中でも一番ポップな曲調である第七番はヘレヴェッヘが指揮する演奏のほうがあっているのではと思った。いずれにしても僕はクラシックは門外漢なので僕の感想が正しいかは、専門家や音楽家の前では自信がない。

 僕の専門はジャズである。うちの中二の息子が女性ジャズピアニストの上原ひろみを気に入っている様子である。彼女は超絶技巧の実力派ジャズピアニストである。美人系の山中千尋よりも息子が気に入っていることに「そうか」などと思ってしまう。そんな息子は上原ひろみの曲「スパイラル」が好きになったようすで、携帯音楽プレーヤーを聞きながら採譜しようとしている。耳で聞くただけではなかなか難しいところがあるらしく、楽譜はないだろうかと言いはじめた。インターネットで調べてみるとPDFでスコア化したものを見つけたので印刷して渡した。彼は今それを見て弾こうとしているが、楽譜を見て初めて上原ひろみのすごさが分かったような気もする。この「スパイラル」はチックコリアの「スペイン」や「ラ・フィエスタ」のようにスタンダードとなるかもしれない。
 それにしても今やジャズは、時代とシンクロしていないため、時代の感性を表現するには媒体としては適してはいない。1970年代から80年代はクロスオーバーやフュージョンとして人気を博した。2000年に入ってからは辛うじて上原ひろみやブラッドメルドー、ステイシーケントなどが存在感を感じるものだが・・・。
 チックコリアとゲーリーバートンが1970年代デュオを組み名盤が生まれた。「クリスタルサイレンス」と「インコンサート」である。「インコーサート」はクリスタルサイレンスのライブ版である。今から2−8年前の2000年、まだNAPSTERがピアツーピアのファイル交換システムとして機能していた頃、このデュエットのアルバムを落とそうとしたもののなかなか引っかからなかった。2005年にCDが再発売されたみたいで、CDレンタル屋さんにも置かれるようになった。地道な人気が下支えとなったのか、二人は再結成して先月The New Crystal Silence を発売した。それをアマゾンから送ってもらったのを聞いたのであるが、当時の感動を得ることは難しかった。その前に発売したチックコリアと上原ひろみの東京ブルーノートでのライブはそこそこ聞き応えがある。ボーナスとしておまけでついていたDVDを息子が見たためか、上原ひろみに興味をもったみたいである。

 アメフラシは円を描く。時々この言葉がキーワードのように僕の頭の中に鳴り響いている。
 先日NHKのドキュメントでミヤンマーの沿岸で船上生活をしている、モーケン族の様子を描いていた。魚を手づかみしたり、なまこを燻製にして製品化して現金を手に入れる。水は島に上陸して湧き水を飲みそれで洗濯をする。しかし医療には縁遠いためか、子供が育たず多産なものの半数は幼くして亡くなる。
 海底を縦横無尽に漁を行っている様子をみているとある本を思い出した。「奇妙でセクシーな海の生きものたち」 のなかからいくつか海の生物の生態を紹介しよう。
--------------------     
 カリブ海に住む掃除魚はサバイバルのために他の魚のクリーニングをする必要はない。彼らは従来の行動様式である岩の表面から小さな魚をついばんで食べることをいつもやっている。しかしときおり ・・・どんな刺激によるものかは分からないが・・・・彼らは掃除魚に変身し、クリーニング・サービスを提供する。掃除魚たちはサンゴ礁のてっぺんにクリーニングステーションを開設し、その近くでは常連の大きなさかなたちが列をなして順番を待っている。海にもぐったダイバーたちが、さまざまな種類の大きな魚たちがずらっとそろってパレード中のようなシーンにでくわすことは珍しくない。魚たちは水の中でゆらゆら留まって、「無害」「無抵抗」をアピールする特別なポーズをとって、クリーニングをしてもらおうと誘いをかけている。彼らはいわば魚床屋のお客なのだ。このカリブ海でのクリーニングの情景は、太平洋でのクリーニングの相利共生の関係とは対照的である。太平洋では、ホンソメワケベラ属の数種が掃除魚として、他の魚のクリーニングをすることでえさを得て暮らしている。南太平洋のホンソメワケベラたちは他の魚たちと義務的共生関係を結ぶのに対し、カリブ海にいる掃除魚と他の魚との関係は、随意的共生となる。

「奇妙でセクシーな海の生きものたち」 ユージン・カプラン著
---------------------
 蛸の生態も不気味なものがあるが日本の食生活には欠かせないイカにも実に不思議な領域がある。
---------------------
 メスだけに寄生する生物?

 19世紀、研究航海の途上、ひとりの科学者が船の甲板で日課のイカの解剖をしていた。彼は、釣り上げられたメスイカの外套腔のなかに、小刻みに動く奇妙な「物体」を発見した。ほかのメスイカのからだを開いてみると、やはり同じ「物体」がある。ぐにゃぐにゃ動く不思議な「生物」がメスの体内だけにいるという事実を前にして、科学者は考え込んだ。彼はついに、メスだけに寄生するまれな種類の寄生生物を発見したと、興奮しながら発表し、その名前はヘクコトュルス(Hectocotylus)。何年もあとになってから、ヘクトコトュルスと名づけられた生物は、オスイカの先端がちぎれたものだったと判明する。繁殖のさなかの激しい動きで、精包を渡す役目のオスの交接腕の先が、メスの外套腔の中で切れて残っていただけの話だったのだ。それでも、その名前だけは定着した。頭足類では、精子を運ぶ腕の先端部が、ヘクトコトュルスと呼ばれるようになる。世の多くのカップルが男性のペニスに内輪の愛称をつけて楽しんでいるが(モーツアルトは自分の男性自身を「私のちっちゃな兵士」と呼んだ)、雄性生殖器官が正式な学名のついた生物として記されたのは、このヘクトコトュルスだけである。

「奇妙でセクシーな海の生きものたち」 ユージン・カプラン著
-----------------------
 驚くべき海の生態がこの本の中で明らかになっていく。そして「アメフラシ」について。「アメフラシは輪になる」これが答えである。
-----------------------
 アメフラシは何度も交接をする。頭部にアンテナのように立った後方の触覚は、「嗅覚突起(rhinophore:rhinoは鼻の意味)」だ、水に含まれている匂いを感じ取り、仲間の存在を知る。性的フェロモンの誘引成分が水の中にさっと広がれば、多くのアメフラシが同時に刺激を受けて集り、本当の乱交パーティーがしばしば開かれる。オスとメスの一組のつがいが交接する。オスはそのペニスをメスの生殖孔に入れる。おっと、ちょっと待って!セックスの匂いで別のアメフラシも来ている。そのアメフラシは最初の「オス」の後ろに並んだ。そしてペニスをその「オス」の生殖孔に入れる。最初の「オス」は自分の前の「メス」の体内に精子を放出したばかりだというのに。この不思議な事態を説明するキーワードただ一つ、「雌雄同体」だ。アメフラシは一匹の体内にオス・メス両方の機能を同時に持っている。そして、フェロモンはほかにもたくさんのアメフラシを引き寄せた。彼らの歩みは非常にのろいが、それでも最初の三匹たちのほうへ刻一刻と近づいてくる。到着した彼らは一列に並び、一匹ずつ、後ろのものに対してはメスとしてふるまい、前のものに対してはオスとしてふるまう。なんと数珠つなぎのセックスだ!しかし、この整列は構造的に不公平となる。なぜかというと、列の儀式の中で役割参加を100%こなせない・・・オスとして行動できない・・・ことになってしまう。しかし、進化の過程で彼らはその問題を克服した。もし、読者の皆さんがアメフラシと同じくらい賢かったら、彼らのやったように、この問題を解決できるのだが。

「奇妙でセクシーな海の生きものたち」 ユージン・カプラン著
-----------------------


今日は


そんなとこです。



では。


中森慶滋
 

ご意見がありましたら以下までメールをお願いします。

ishi-yaku@m2.spacelan.ne.jp
posted by keijin at 12:44| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
はじめまして。
突然すみません。

上原ひろみの「Spiral」の譜面を探していてたどり着きました。
ネットで調べたところ、もう公開をしていないようで、どこを探しても手に入りそうにありませんでした。

よければ、スコアのデータをいただけないでしょうか。
連絡をお待ちしています。

失礼しました。
Posted by げ at 2010年07月17日 11:25
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/12477296

この記事へのトラックバック